重要性を増すSNS領域、動画マーケティングはどう展開する?
近年はスマートフォンを中心とするモバイルスマート端末の急速な普及と、高速インターネット環境の整備が進んだことなどから、老若男女、あらゆる人々の毎日の暮らしにSNSが深く浸透、消費行動に与える影響もきわめて大きくなりました。それを受け、マーケティングにおけるSNS対策は重要性を増す一方にあり、SNSのフォーマットが動画のサポートを強化する中、動画マーケティングの主戦場もSNSに移行しつつあります。
かつては動画共有サイトや各種Webサイト・ポータルサイト、オウンドメディアにおける動画の活用が主流でしたが、ユーザーの動画視聴をめぐる姿勢の変化から、SNSというチャネルへの注目が急上昇しているのです。
しかし、企業はただSNS上で動画コンテンツを投稿・配信すればよいわけではありません。露出先の特性を理解した展開策、使い分けと活用の工夫が必要という点は、これまでのマーケティングと同じです。そこで今回は、SNSの種類と特性、主要SNSにおける動画マーケティングの展開の仕方などについて考えていきましょう。
伸びるSNSからの動画視聴、拡散性に期待大
サイバーエージェントによる2017年の国内動画広告市場調査結果をみると、スマートフォン向けの動画広告が前年度比190%と大きく成長、動画広告市場全体の約8割を占めるまでになると報告されました。
2016年1月には、Facebookでのユーザー動画視聴時間がトータルで1億時間を突破したと発表されたほか、最近も毎日5億人超がFacebookのフィード上で動画を視ているという調査結果が出るなど、人々のオンライン動画視聴におけるメインストリームが“スマートフォン経由のSNSから”というスタイルになりつうあることが実感されています。
米国ではすでに、2016年のBtoB企業マーケティング担当者を対象に実施したRegalix社の調査で、動画広告配信チャネルに選択するもののトップが「SNS」で79%を記録、「Webサイト」の77%や「動画共有サイト」の58%、「メール」の56%などを上回りました。いかにSNSというチャネルの価値が高く評価され、動画マーケティングの中心になってきているかが理解されるでしょう。
SNSは年代や性別を問わず幅広い層が利用しており、Twitterは月間約3.5億人、Facebookは20億人、Instagramで約8億人といった分厚く膨大なユーザー基盤を有しています。テキストによる情報配信や顧客との交流、ファン醸成においていえるように、そのリーチ数の多さとタイムリー性、安価なマーケティング展開が可能な点、そして高い拡散性が期待できるという大きな特徴が、動画プラットフォームとして活用する際も、大きなメリットであり、鍵になります。
インパクトのある工夫をもった動画や、時流に乗る動画の投稿で、名も無い一般人から、一躍注目を集める有名人、インフルエンサーとなるユーザーがあるように、“いいね!”やリツイートを多く獲得し、拡散・共有されることで、その影響は飛躍的に拡大、インプレッションと、認知拡大など達成したい目標に対する効果の増大が見込めるのです。
加えて、TV CMではリーチが難しくなりつつある若年層を中心とした層にもアプローチしやすいSNSと、テキストより圧倒的に豊富な情報量を印象に残るかたちで表現し伝えられる動画が結びついたSNSでの動画マーケティングは、今後の重要な注力領域になると考えて間違いありません。
SNSの特性をとらえながら賢く活用!
SNSとひとくくりにしても、それぞれに“つながり”の特徴があります。動画マーケティングでは、そうした特徴を踏まえ、より受け入れられやすく、ストレスを与えない配信、印象的で好感をもって受け取られるコンテンツの配信を目指すことが大切です。
たとえばFacebookは、実名による登録制をとることから、よりリアル世界での人間関係に近いつながりがみられます。動画再生時間もやや長めの傾向があり、4分程度がピークとなっています。最大120分に対応するフォーマットでもあり、ある程度丁寧にブランドストーリーを伝えるような広告が向くでしょう。
一方Twitterは、匿名で広がる興味・嗜好に基づいた関係性のSNSであり、面白いと思ったもの、気になる投稿を“フォロー”することでつながっていきます。トレンドをザッピング的に追うケースも多く、最大10分の自動再生広告を投稿できますが、再生時間のピークはやや短くなり、1分程度といわれます。より内容をコンパクトにまとめた、印象的で手軽に共有できる動画が適切と考えられます。
InstagramもTwitterと似た、興味関心、趣味嗜好でつながるSNSですが、画像に特化した仕様であることから、ビジュアルセンスの高さ、感度の高いおしゃれな動画が支持されやすい傾向にあります。女性ユーザーの割合が高いことも留意しておくとよいですね。
LINEも国内のチャネルとして非常に重要なものですが、こちらはパーソナルでクローズドな“友だち”とのチャットアプリから進化したSNSであることから、より親密さを感じさせるコンテンツが有効な空気があります。会話を誘発するような双方向性の仕立ても向いています。
ユーザーによる自然拡散力の強さはTwitterやFacebookに劣りますが、従来のマス広告チャネルでリーチしづらい若年層が、最も長時間接触しているメディアとなってきているため、10代・学生への大規模なリーチを図りたいケースなどに有効です。また主婦層に強いことでも注目されており、ターゲットを意識した展開でチェックしておきたいSNSです。
音声オフへの配慮も
SNS動画の場合、スマートフォン経由で隙間時間にチェックされていることが多く、音声をオフにして再生されるケースが全体のほとんどを占めることも注意が必要なポイントです。ユーザーの多様な環境を意識し、ほとんどのフォーマットがデフォルトで音声オフになっており、ユーザーもそのまま視聴するケースが多いのです。
米国のメディア・エージェンシーによる調査では、Facebook動画の85~90%は音声オフで視聴されていたと報告されています。Facebook以外のSNSでも同様の傾向が確認されていますが、いずれもブランド認知向上や購買意欲の向上、売上アップなどKPIが動画音声のオン/オフに影響されることはなく、メッセージさえ伝われば問題ないことも判明しています。
ですからテキストを効果的に交えるなど、音声オフで視聴されることをあらかじめ意識して制作・配信すれば、十分に高い効果が望めるでしょう。
好みの動画をじっくり視聴するにはYouTubeなどが向きますが、これら従来の動画共有サイトは拡散効果でSNSに劣ります。近年はYouTubeのブレイク動画も、InstagramやTwitterでの共有、拡散がきっかけとなるケースが圧倒的に増えました。動画広告の情報内容としても、より記憶に残りやすいのはSNSとの調査結果もあります。広く認知向上・拡大を目指すなら、SNSを活用した動画マーケティングが圧倒的に有利であり、これを取り込まない手はありません。
近年はFacebookやInstagramでもライブ配信がサポートされ、このライブ配信を活用した顧客コミュニケーションも、今後の動画マーケティングで注目されている領域です。
時代とともに訪れる変化も激しいSNSですが、それぞれの特徴を理解し、工夫した活用の仕方、使い分けを実行することで、リーズナブルに高い効果を生む動画マーケティングが可能になります。トレンドを注視しながら賢く利用していきましょう。
(画像は写真素材 足成より)
YouTube総研
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