より高い効果を得られる動画マーケティングの実践に向けて
かつては雑誌ビジュアルや屋外広告、ポスター、TV CMなどに力点が置かれることの多かったマーケティングプロモーションは、昨今、その主戦場をインターネット上へと移し、リアルとの融合を目指すスタイルが広く浸透しました。さらにインターネット上のコンテンツも、テキストやバナーでの静止画メインから動画重視へと進化、日々リッチコンテンツ化が進む状況となっています。
企業の公式YouTubeチャンネルやSNSアカウントを通じた、顧客と距離の近い動画マーケティング、オウンドメディアへのオリジナル動画埋め込み、アフターサポートや株主への事業説明案内、優秀な人材確保を目指す採用向けの企業紹介など、その目的やアプローチはさまざまながら、全体としてオンライン上の動画マーケティングが非常に活発化しているといえるでしょう。
その場の雰囲気や細部まで作りこんだ独自の世界観など、テキストではカバーできない領域まで盛り込むことができ、ごく短尺のものであっても非常に多くの情報を印象的に伝えることができる動画は、もはや現代のマーケティングに欠かせないものであり、動画コンテンツを作成するのは当たり前、問題はいかにそれを戦略的に活用するか、より高い効果や持続的メリットを実感できるものにするかという点にあります。
そこで今回は、実際に展開された企業の動画マーケティングにおける顕著な成功事例をいくつかピックアップし、その特徴やプランを分析・研究、今後の施策立案のヒントとなるよう、解説していきたいと思います。
アイデアを輝かせた新鮮なひと工夫がポイント!
日本でも人気の高い家具量販店「IKEA」のIKEA Singaporeは、2015年版カタログブックのプロモーションにあたり、まるでAppleの新製品紹介動画を思わせるようなユーモアあふれるスタイルの動画を制作、公開して話題になりました。
誰もがイメージできるフォーマットスタイル、毎回高い注目を集めるAppleの新製品紹介に倣うことで、とくにインターネット上での滞在が長いユーザーに親和性が高くウケやすい仕上がりの動画となりました。あらゆるCM動画が“Apple化”するなどといわれる近年の傾向を逆手に取ったものともいえます。公開されたこの動画は、1,800万回を超える再生数を記録、多くの人々に共有されるコンテンツともなったことが報告されています。
また「メルセデス・ベンツ日本」は、誰もが知るおなじみのキャラクターである「マリオ」とコラボ、『スーパーマリオブラザーズ』の実写版というスタイルで新規投入するモデル車のPRを展開しました。同社はこのモデルを発売するにあたり、40歳以下、30代をメインターゲットに据えたいという狙いがありましたが、この世代の多くが“ベンツ”として手が出しにくい高級車というイメージを抱いていたため、それを払拭すべく、こうした動画を制作したとしています。
ベンツとマリオという意外性と話題性に富んだコラボということもあり、公開されるやいなやさまざまなWebメディアやSNS上で話題となり、動画再生数も急上昇、新規顧客層の開拓とファンの獲得につながって、当初の狙い通り、とくにマリオに親しみをもつ30代の来店が促進されたことが報告されています。
ファミリーレストランとして身近なすかいらーくガストは、季節限定メニューのPR動画で、あえて“ギャル語”を多用したユニークな食レポをコンテンツ化、使用されるギャル語の解説付きで広く話題化しやすいプロモーション展開を行いました。
その結果、若年層の女性はもちろん、幅広い層におもしろ動画として拡散されるものとなり、商品の認知向上に成功、来客数アップにつなげることができています。
ファミリーレストラン業界では他の企業も動画マーケティングに積極的で、会員向けメールマガジンを動画メールに変更、より食欲をそそるコンテンツ動画をタイミングよく届け、再生終了後に自動でクーポンページへと遷移するといった戦略を用いた事例もありました。限定クーポンの配布は広く行われている手法ですが、この動画を含む配信に変更した結果、クーポン表示率は従来の1.5倍に伸びたとされています。
不動産関連では、野村不動産アーバンネットが、一般公募で「家と家族に関するエピソード」を募集、入賞作品をもとに制作した動画をYouTubeで公開しました。意外性のあるタイトルと、誰もが自らの生活に引きつけて受け取りやすい感動的なストーリーを、企業目線ではない一般生活者のリアルな視点にこだわって丁寧に描き出したスタイルが好評で、150万回もの再生回数を記録、企業イメージの改善に成功しました。
費用が限られていても可能性は無限大!
動画マーケティングの成功事例は、こうした多くの消費者を対象とする大手企業ばかりではありません。ニッチなニーズに応える中小企業や地域密着型の企業でも、優れた効果がみられています。
法人向けにカスタマーサービスソフトを提供する「Zendesk」は、自社製品を用いることで、顧客とのスムーズなコミュニケーションが図れること、深い信頼関係が築けることを老夫婦の自然であたたかい関係性をベースに動画で表現し、ナチュラルなアプローチでも印象に残るプロモーションを展開しました。BtoCばかりでなく、BtoB企業にも有用であることを立証したよい事例といえます。
愛知県内で来店型保険ショップを展開する「保険サロン」は、実店舗で撮影した写真画像と音声、アニメーションを効果的に組み合わせ、地域密着型のあたたかな雰囲気に満ちた動画を制作、イベント情報やサービスの魅力を分かりやすくまとめて公開しました。費用がかさみがちな実写スタイルをとらずとも、20万回を超える再生回数を記録、高い認知向上効果を獲得しています。
加島商事によるスマートフォン用車載ホルダー「EasyOneTouch2」のPR動画も注目される成功事例です。こちらは顧客満足度の高い商品ながら、ECサイトでの売上が伸び悩んでいたため、車関連に強いYouTuberを起用、実際にこの製品を用いた説明動画を投稿してもらいました。その結果商品への注目度が高まり、わずか1週間でAmazon売れ筋ランキングが1万位台から900位台に急上昇するなど、売上アップを達成することができたそうです。
このように予算などの面で制約が多い中小企業でも、工夫次第で大きな効果を得られることが分かります。YouTubeなど無償で利用できる窓口も多い動画マーケティングは、むしろ中小企業やスタートアップ企業・ベンチャー企業に無限大の可能性をもたらすものともいえるでしょう。
いかがでしたか。さまざまな成功事例をみてきましたが、いずれも企業目線ではなく、視聴者やターゲットユーザーの視点に立ち、独自のひと工夫を加えたものとなっていることがポイントとして指摘できます。とくに認知向上や新規顧客の獲得を狙うなら、SNSを中心に拡散したくなる内容を含ませることが鍵になるでしょう。
動画マーケティングの実施目的とターゲット、狙いを明確に定め、成功事例も参照した最適な戦略を立てて実践を重ねてみてください。
(画像は写真素材 足成より)
Youtube総研
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