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今振り返る、一世風靡の6秒動画「Vine」とは何だったのか

2018.03.29

コラム

今振り返る、一世風靡の6秒動画「Vine」とは何だったのか

たった6秒の動画SNSとして世界でヒット
移り変わりの激しいIT業界、広告業界にあって、長くヒットを続けるメディアが数少ないものであることは周知の事実ですが、グローバルにユーザーを獲得、着実に成長を遂げていたはずのモデルであっても、その例外ではありません。かつて流行し、企業マーケティングでも積極的に活用されていた「Vine」はその代表例でしょう。今回はあらためてこの「Vine」とは何であったのか振り返りつつ、Webマーケティングを考えます。

「Vine(ヴァイン)」は、わずか6秒間のループ再生される動画クリップをコンテンツとした動画共有サービスで、ユーザーは「Vine」上に作成した動画クリップを投稿、共有して閲覧したり、TwitterやFacebookなど他のSNSサービスで共有したりできる仕組みとなっていました。

たった6秒という短さを思うと、その中で何を撮り何が表現できるのかと疑問に感じられるかもしれませんが、その限られた時間内に凝縮された動き、変化の面白さが無限にループして再生されるスタイルは、実際に体感してみると独特なインパクトとハマってしまう楽しさがあり、意外性や手軽さも相まって人気を獲得していったのです。

2012年6月に設立されたVineは、サービスの正式リリース前、同年10月にTwitterによって買収されたことでも話題を集めました。2013年に入ってまず1月にiOS向け、6月にはAndroid向けと無料アプリが正式公開されると、本格的に広がりをみせ、億単位のユーザーを抱えるソーシャルメディアへと成長、競合アプリが伸び悩む中、最も活況な動画共有アプリとして認知されるものとなりました。米Time誌の2013年版「50 Best Android Apps」にも選出されています。

高い知名度の「Viner」も誕生
短い6秒という尺の中で、ループの特性を活かしたコントやミュージックパフォーマンスなど、さまざまな工夫を施したコンテンツを制作、投稿を重ねるユーザーも現れ、フォロワー数100万人超、1億回以上のループ再生数を獲得するような「Vine」のインフルエンサー、「Viner(ヴァイナー)」なる人々も登場してきました。

こうした絶大な影響力をもつ「Viner」を起用し、自社商品・サービスの認知やキャンペーンの周知拡大を狙ったマーケティングを展開した企業は、若年層を中心にこれまでリーチしづらかったターゲットへの高いリーチを獲得するなど、多くが高い効果を得られたといわれています。

企業側が展開したいキャンペーンにあわせ、具体的なテーマを設定、それにそった「Vine」動画を制作して投稿してもらうといった参加型のマーケティングも多くの成功例を生み出しました。出されたお題から思考をめぐらせ、6秒間にそれを表現する、限定された中での工夫と創造性が積極的に競われ、頻繁に投稿・閲覧が繰り返されることで話題をさらい、ファンを醸成することにもつながっていったといえるでしょう。

「Vine」そのものは終了となるも新たなスタイルを確立
「Vine」の成功は、Instagramに似た正方形のスタイリッシュなフェース、シンプルで使い勝手のよい編集・投稿プラットフォームにTwitterを中心に、主要SNSへ溶け込んだ拡散力の高さなど、さまざまなポイントが挙げられますが、発想における鍵は、無料アプリで誰もがすぐに参加できる手軽さ、6秒間という一見厳しすぎる制限によって生まれた一発芸的な直感的面白さとインパクトにあったといえるでしょう。

重くなりがちな動画クリップでも、6秒間ならば簡単に共有・閲覧できますし、ちょっとした話題のタネや暇つぶしにも使いやすいですね。また、言語や背景文化にあまり頼らないかたちとなるためグローバルに楽しめるアイデア表現が次々に生まれ、広がっていく、まさに現代のスマートフォンを主体としたニーズに即応しています。

密度の高いアーティスティックなクリエーションから、ありそうでなかった身近な切り取りアイデアまで、思わず自分も参加したくなるところが「Vine」の大きな魅力でした。

残念ながら「Vine」は、身売り交渉の度重なる失敗などから、2016年10月に終了が告知され、翌17年の1月で全世界におけるサービスを終了、新たな投稿は行えなくなりました。現在は「Vine Camera」アプリで作成した6.5秒のループ動画を、直接Twitterにアップロードできるというかたちで、「Vine」特有のフォーマットが存続されています。

このように「Vine」そのものは終焉を迎えたものの、絞り込みの発想で、SNS時代の新しい動画クリップ共有スタイルを確立した点は特筆に値するでしょう。企業による一方通行の発信型でなされるプロモーションではなく、一般消費者を巻き込んだ双方向型のマスプロモーションを実施することがいかに効果的で費用対効果の高いものであるかを実証した点でも、現在につながる潮流を作ったといえます。

拡散・共有される動画コンテンツは、何でも盛り込めばよいというものではなく、情報が凝縮された直感的に興味・関心を喚起するもの、アイデア勝負で無駄を削ぎ落としたシンプルなものであることが重要だというのも、「Vine」の流行から学べるポイントです。

企業目線ではなく、一般消費者とコミュニケーションしながらコラボレートする場を生み出し、思わずその輪に加わりたくなる契機をもった動画マーケティングの展開は、今後も認知向上やブランディングを目指す企業にとって、重要なアプローチ施策であり続けるでしょう。

(画像は「Vine」公式サイトより)